そのおじさんは電車の中。
窓際に立つ私のすぐ横に座って
その時はまだスヤスヤ眠っていた。
しだいに電車は混み始め
スシ詰め状態。
今夜は出かける予定があったので
チェニックドレスを着てちょっとオサレしていた私。
メイクもかわいく決めていた私。
ヘッドフォンから聞こえる音楽にご機嫌な私。
バッグを抱え、携帯でゲームなどしてる今時な私。
とにかく今日イケていたはずなのだ、私は。
そう、優しいおじさんに声をかけられるまではね!
混雑してきたその時、優しいおじさんはふと目覚めた。
そして私に目をとめると、サッと立ち上がるなり
善意に満ち満ちた、眩しい位の笑顔を向けて
「どうぞ、お座りになってください。」
と、私のお腹に目くばせをした。
瞬、状況を飲み込めずキョトン面な私に
「どうぞ、どうぞご遠慮なさらずに!だって、ほら~ね~?」
みたいなジェスチャーをしてくるその優しいおじさんは
ハタと気付く。
「あ、あ・・・あ~、す、すみません、すみませんっ」
「・・・・・・・。」
あなたがとっても優しいおじさんなのはよーく分かった。
うん、良ーく分かったけれども、
その優しさは私には要らないのっ!
むしろその善意は物凄い凶器だ。
私を撃沈させたのだ。
でも、そんな悪気の無いただの優しいおじさんに対し
あからさまに否定できるはずもない私は
「いえいえ、結構です。フフフ」と、ニコリ☆
心は土砂降り。
「おじさんは間違いなく優しいよ、
世の中みんな、おじさんみたいなら
本当救われるよ。
でもね、優しいおじさん、
チェニックドレスは別に
マタニティドレスじゃないんですよ~!」
今日一日、鏡やガラスに映る自分の姿(特にお腹回り)が
気になって気になって仕方がなかった。
そうして
「どう見ても妊婦に見えないじゃん!」
とオサレなはずの自分に言い聞かせてみる。
いや、待てよ、
そうとも言い切れなかったりして・・・。
どうなの?どうなの?
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