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2005年9月4日日曜日

優しいおじさん

そのおじさんは電車の中。


窓際に立つ私のすぐ横に座って
その時はまだスヤスヤ眠っていた。

しだいに電車は混み始め
スシ詰め状態。

今夜は出かける予定があったので
チェニックドレスを着てちょっとオサレしていた私。

メイクもかわいく決めていた私。
ヘッドフォンから聞こえる音楽にご機嫌な私。

バッグを抱え、携帯でゲームなどしてる今時な私。

とにかく今日イケていたはずなのだ、私は。


そう、優しいおじさんに声をかけられるまではね!


混雑してきたその時、優しいおじさんはふと目覚めた。

そして私に目をとめると、サッと立ち上がるなり

善意に満ち満ちた、眩しい位の笑顔を向けて

「どうぞ、お座りになってください。」

と、私のお腹に目くばせをした。


瞬、状況を飲み込めずキョトン面な私に

「どうぞ、どうぞご遠慮なさらずに!だって、ほら~ね~?」

みたいなジェスチャーをしてくるその優しいおじさんは
ハタと気付く。

「あ、あ・・・あ~、す、すみません、すみませんっ」

「・・・・・・・。」

あなたがとっても優しいおじさんなのはよーく分かった。
うん、良ーく分かったけれども、

その優しさは私には要らないのっ!


むしろその善意は物凄い凶器だ。
私を撃沈させたのだ。


でも、そんな悪気の無いただの優しいおじさんに対し
あからさまに否定できるはずもない私は

「いえいえ、結構です。フフフ」と、ニコリ☆

心は土砂降り。


「おじさんは間違いなく優しいよ、
 世の中みんな、おじさんみたいなら
 本当救われるよ。
 でもね、優しいおじさん、
 チェニックドレスは別に
 マタニティドレスじゃないんですよ~!」


今日一日、鏡やガラスに映る自分の姿(特にお腹回り)が
気になって気になって仕方がなかった。
そうして
「どう見ても妊婦に見えないじゃん!」
とオサレなはずの自分に言い聞かせてみる。

いや、待てよ、
そうとも言い切れなかったりして・・・。
どうなの?どうなの?


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